2013年8月10日土曜日

夕方、鉄橋の上で

その日、その時、難波行きの急行で疾走していた。
依頼があった写真を難波で落ち合ってお渡しするのがこの日の目的だった。
一度難波のホームに立って、さて連絡しようと携帯電話を探すと、自宅の机に置き忘れていた事に気づく。再び高野山行きに飛び乗って、特に好きでもない電車にこの日は4回も乗る事ができた。

本当はとっくに到着している時間のはずなのに と自分に悪態をつきながら、
南大阪の都市部を抜け、大阪市内までの少しの間、景色が開けたので気分転換に外にぼんやりと目をやる。電車は本日、3回目の大和川の鉄橋を渡り始めた時。

乗客は僕を含め、だいたい80%の乗車率。
一様にその日の疲れが来てか、うつらうつらと舟をこいでいた。
大阪の電車内は、会話でけたたましくうるさいーなんて言う情報は、嘘だ。

流れる街の景色の視界も、すぐに眠気で覆われようとしていた閑かな午後。
一定に枕木を跨ぐたびに揺れる音と、電車のモーターの駆動音だけが響く車内で、
その調和的なリズムの中に、違和感の音を耳が聴き取るのに、ほんの数秒かかった。
カバンの中の携帯がけたたましく鳴る。自分だけではない、そこにいる乗客全員の携帯が一斉に壊れたように発狂する。耳の隅に不安感を残すようなこの旋律はーそこにいる全員が目を合わせたような一瞬があった。全力で手すりにつかまり、これから起こるであろう事に全身で対応できるように。

一瞬が長い。異常な心拍数。
時速70kmで疾走する鉄の塊の中にいて、そのスピードのコントロールが自分ではできない場合。
震度5以上で鳴る緊急地震速報。南海大地震?
無事に安全停止してくれるのか、それとも生存が困難になるのか、
忘れ物さえしなければ、今頃地面に立っているのに、と後悔したりなど、
冗談ではない、いろんな事を考えた。

ー来るはずの事象が、無い。
そのまま電車はゆっくりと減速して停車した。
利用していた南海電車は、運転手の方も、駅員の方も、非常に冷静な判断と対応で、運行に遅れはあったけど、見事にクリアできていたと思う。これはとても安心できた。


その日のうちにそれが誤作動によるものだと分かり、一安心もつかの間。

交通は最大に麻痺してしまったし、仕事に影響が出た人も多いと思う。
テレビでは謝罪会見!なぜこんな事が!!!!??と鬼の首を取らん勢いの番組ばっかりだったけど、
言いっこ無しであって欲しい、と個人的には思っている。
むしろ、人智を超えた速度で情報を一瞬で伝えたあの機能が凄い。

案の定というか、携帯も繋がり難く、メールも飛ばない。
携帯電話なんか、スマホだなんだと一日中コマーシャルをやっていて、平時でなければ結局使えない。
インターネットがあればいいのだけど、無線でネットを利用できるのは、限られた人のみだ。
実際に何も起きなかったのに、パニックによって、情報手段を断たれた。
もし本当に地震に遭った時、どう対応するべきなのか。

今回は直ぐに偶然、実家から電話が繋がり、取る事ができたが、電話の主の母の声で、改めて恐ろしい事態だった事に震えた。祖父が倒れた時の第一報の電話の時以上の神妙さだった。

その時、大阪湾岸の大きなショッピングモールで買い物をしていた人は、
アラームが鳴ろうと、館内アナウンスが響こうと、
何食わぬ顔で買い物を続ける人々が多く、大変に驚いたそうだ。
非常口に行くも、非常口は鎖で封印されていて、すぐに使える状態になかったそうだ。

言葉では簡単に言える。突然来る。来た時に備えをー
事が起きた時に、本当にできるのか?自分がちゃんと対応できるのか、改めて考え直させられた。



トラちゃん写真館 成人式、入学式、七五三、お宮参りなどの記念写真に
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